がんのリスクを減らせる生活習慣とはどのようなものですか?

「芸能人のがんに関するニュースをよく聞く」「親戚が、がんになった!」「親友から、がんだと打ち明けられた」……がんを身近に感じるのはこんなときかもしれません。
そして、「もし、自分がそうなったらどうしよう?」「がん予防の情報が出回っているけれど、何を信じればいい?」、このように思う人は多いのではないでしょうか。

がんの予防対策が必要と考える人は9割と多いものの、実際に対策している人は3割と少ないという調査結果があります(2016年10月末実施の味の素による『がんの予防意識』に関する調査より)。
生活習慣の悪化ががんの原因の1つであると知ってはいても、明確な基準を知らないために具体的にはどうすればよいかわからないのが現状でしょう。

そこで、国立がん研究センターがん情報サービスで公表されている『科学的根拠に基づくがん予防』(2017年11月09日更新)をもとに、生活習慣をどう改善すれば、がん予防につながるのかをお伝えします。

あなたはがんのリスクが高い人?生活習慣をチェックしてみよう!

まず、以下の項目で、あてはまるものはいくつあるでしょうか。

生活習慣についてのチェックリスト

チェックリストで、どのくらいチェックがつきましたか?
日本人のがん予防にとって重要な要因は、「喫煙」「飲酒」「食生活」「身体活動」「適正体重」の5つの生活習慣と「感染」の合計6つです。

がんは生活習慣への意識で予防できる。気を付けるポイントを解説

では、がんを予防する生活習慣とはどうすればよいか、具体的に見てみましょう。

嗜好品とがんリスクの解説

まず多くの人が思い浮かべるのは、たばこやお酒など嗜好品との付き合い方ではないでしょうか? ストレス解消に欠かせないという人もいるとは思いますが、がんのリスクを高めるので、付き合い方を見直した方がよいでしょう。

<喫煙>
喫煙が健康に影響を及ぼすことは、皆さんもご存知のことだと思います。『科学的根拠に基づくがん予防』によれば、たばこの煙を避けることを提案しています。

禁煙する
1)たばこは吸わない
2)他人のたばこの煙を避ける

出典:『科学的根拠に基づくがん予防』(国立がん研究センターがん情報サービス)

これに伴い、同資料では禁煙の方法も提案しています。それによると、禁煙はひとりでやろうとせず、医療機関の禁煙外来などで専門家と取り組むことをすすめています。医療保険で受診できる場合もあります。

また、自分がたばこを吸う「能動喫煙」に限らず、周囲の人が煙を吸ってしまう「受動喫煙」も疾患のリスクを高めます。吸わない人は他人が吸うたばこの煙を避けるよう喫煙所に近づかない、完全分煙の店を利用するなど注意するのがよいでしょう。

<飲酒>
飲酒もがんのリスクが高くなります。しかし、ストレスを抱える現代人にとって飲酒は多くの人のストレス解消法となっていることでしょう。ですので、全く飲まないということではなく、適量を心がけて楽しむのが良いでしょう。

『科学的根拠に基づくがん予防』によれば、節酒を提案しています。

節酒する
飲む場合は純エタノール量換算で1日あたり約23g程度までとし、飲まない人、飲めない人は無理に飲まないようにしましょう。
[飲酒の目安(1日あたり純エタノール量換算で23g程度)]
毎日飲む人は以下のいずれかの量までにとどめましょう。
・日本酒 … 1合
・ビール大瓶(633ml) … 1本
・焼酎・泡盛 … 原液で1合の2/3
・ウィスキー・ブランデー … ダブル1杯
・ワイン … ボトル1/3程度

出典:『科学的根拠に基づくがん予防』(国立がん研究センターがん情報サービス)

ビールジョッキで乾杯する写真

がんリスクを減らす食事とは?

食事は毎日欠かすことのできない、重要な生活習慣です。小さな積み重ねが大きな影響を及ぼす可能性もあります。外食も増え、食事バランスが気になる現代人。リスクを把握して、意識的によい食習慣を身に付けたいものですね。

『科学的根拠に基づくがん予防』によれば、食生活の見直しを提案しています。

食生活を見直す
1)減塩する
[食塩摂取量の目安]
日本人の食事摂取基準(厚生労働省策定「日本人の食事摂取基準2015年版」)では、1日あたりの食塩摂取量を男性は8.0g未満、女性は7.0g未満にすることを推奨しています。塩蔵食品、食塩の摂取は最小限にするよう心がけましょう。

2)野菜と果物をとる
[野菜と果物の摂取について]
野菜や果物不足にならないようにしましょう。
厚生労働省策定「健康日本21」では、1日あたり野菜を350gとることを目標としています。

3)熱い飲み物や食べ物は冷ましてから
[熱い飲食物について]
熱い飲み物や食べ物は、少し冷ましてから口にするようにしましょう。

出典:『科学的根拠に基づくがん予防』(国立がん研究センターがん情報サービス)

各項目について見ていきましょう。

<減塩>
塩分濃度の高い食品を摂取する人は胃がんのリスクが高いとされています。日本人が好む食品である塩辛などの海産物加工品、そばやうどんといった麺類なども塩分が多めに含まれています。こうした食品が続く食事は避けるよう注意したいものです。

なお、厚生労働省によれば、1日あたりの食塩摂取量を男性は8.0g未満、女性は7.0g未満とするように推奨しています(厚生労働省策定「日本人の食事摂取基準 2015年版」)。

<野菜と果物を摂取>
野菜と果物の摂取量が少ないとがんのリスクが高いことが示されているものの、直接的な因果関係は明らかになっていない、ということです。しかしながら、生活習慣病の予防にもつながることから、意識的に摂取するのが良いでしょう。厚生労働省策定「健康日本21」では、1日あたり野菜を350g食べることを目標にしています。目安としては小鉢で5皿分程度になります。

<冷ます>
熱い飲み物や食べ物は、食道がんのリスクを高めるといいます。口の中や食道の粘膜を傷つけないよう、熱い場合は少し冷ましてから口にするようにしましょう。

がん予防の観点から日々の運動は、重要な生活習慣

健康維持に有効といわれる運動ですが、がん予防の観点からも重要な生活習慣だといえます。

『科学的根拠に基づくがん予防』によれば、身体を動かすことを提案しています。

<身体を動かす>

身体を動かす
1)活発な身体活動によりがんになるリスクは低下します
2)推奨される身体活動量
[推奨される身体活動の目安]
・身体活動の取り組み方
 現在の身体活動量を、少しでも増やしましょう。
 例えば、今より毎日10分ずつ長く歩くなど。
・運動の取り組み方
 運動習慣をもつようにしましょう。
 例えば、30分以上の運動を週2日以上行うなど。

出典:『科学的根拠に基づくがん予防』(国立がん研究センターがん情報サービス)

運動などの身体活動は、がん予防のみならず肺機能の強化など健康を維持するために有効です。厚生労働省『健康づくりのための身体活動基準2013』によれば、18歳から64歳の人の身体活動について、1日に60分の運動が推奨されています。同様に、65歳以上の高齢者については、1日に40分の運動が推奨されています。

運動をしなければと身構えてしまうと、取り組むのが難しく感じると思います。厚生労働省『健康づくりのための身体活動基準2013』では、必要な運動量としては歩行程度でもよいとされています。通勤の際に隣の駅まで歩くようにしたり、買い物に行く際には自転車や車、バスを使わずに歩いたりなど、日常生活に運動を取り入れるようにすると続けやすいでしょう。運動を生活習慣の1つとすることを目標にしてはいかがでしょうか。

ポニーテールでグレーのパーカーを着てジョギングをする女性の写真

<適正体重を維持する>
『科学的根拠に基づくがん予防』によれば、これまでの研究から、太り過ぎでも痩せすぎでも、がんを含む全ての原因による死亡リスクが高くなることがわかったとしています。

適正体重を維持する
1)太りすぎ痩せすぎに注意
[推奨される身体活動の目安]
男性はBMI値21~27、女性はBMI値21~25の範囲になるように体重を管理するのがよいでしょう。

出典:『科学的根拠に基づくがん予防』(国立がん研究センターがん情報サービス)

肥満度の指標としてはBMI値を用いるのが一般的です。男性の適正なBMI値は21~27、女性では21~25。この範囲内になるように体重を管理するとよいとされています。

先ほどの身体運動と併せて日頃から体重計に乗る習慣をつけて、適正となるよう自分の体重およびBMIを把握するようにしておきましょう。

BMIは以下の計算式で算出できます。

BMI値の計算方法

感染症からも、がんは引き起こされる可能性がある

感染症による疾病は、がんを引き起こすリスクもはらんでいます。感染症を予防することは、疾病を避けるだけでなくがん予防にもつながるのです。

『科学的根拠に基づくがん予防』によれば、以下のように示されています。

「感染」もがんの主要な原因です
日本人のがんの原因として、女性で一番、男性でも二番目に多いのが「感染」です。以下のようなウイルス・細菌感染と、がんの発生との関係があるとされています。

ウイルス・細菌感染とがんの発生との関係図

いずれの場合も、感染したら必ずがんになるわけではありません。それぞれの感染の状況に応じた対応をとることで、がんを防ぐことにつながります。
・地域の保健所や医療機関で、一度は肝炎ウイルスの検査を受けましょう。感染がわかった場合には、専門医に相談しましょう。
・これらの感染について心配なことは、医療機関や、がん相談支援センターに相談しましょう。
出典:『科学的根拠に基づくがん予防』(国立がん研究センターがん情報サービス)

これらのウイルス・細菌の検査は、地域によっては自治体からの補助が出る場合があるので、確認してみましょう。

生活習慣の改善とがん保険でリスクへ備える

これまでに挙げた点から生活習慣を改善し健康的な毎日を送ることが、がんのリスクを低くし、がん予防につながります。しかし、これらの生活習慣に気をつけたからといって、完全に予防できるわけではありません。万が一、がんになったときのリスクに備えておくことも大事です。

がん保険に入っておくことで経済的な不安を軽減し、日々安心して暮らせ、いざというときにも慌てず対処ができます。そう考えると、精神的な負担も減らせますよね。生活習慣を見直すのとあわせて、いざというときの備えについても見直してみてはいかがでしょうか?